エラのボツリヌストキシン注射は一生続ける治療なのか?──美容医療の考え方
エラ(咬筋)に対するボツリヌストキシン注射、いわゆる「エラボトックス」は、 小顔治療として広く知られています。
一方で、よく聞かれる疑問があります。
「これって、一度始めたら一生続けなければならない治療なのでは?」
この記事では、この疑問をテクニックや流行ではなく、 「美容医療をどう考えるか」という視点から整理します。
エラボトックスは何をしている治療か
エラへのボツリヌストキシン注射は、骨を削ったり形を固定する治療ではありません。
咬筋という「噛むための筋肉」の働きを一時的に弱めることで、 筋肉の張りを目立たなくし、フェイスラインをすっきり見せる治療です。
その作用機序から、この治療には明確な特徴があります。
- 筋肉の神経伝達を一時的に抑える
- 時間の経過とともに作用は弱まる
- 最終的には筋機能は回復する
つまり、エラボトックスは「永久に形を変える治療」ではありません。
「元に戻る=失敗」ではない
美容医療では、「元に戻る」という言葉が ネガティブに捉えられがちです。
しかし、医学的にはこれはむしろ自然な現象です。
ボツリヌストキシンの作用は、 神経筋接合部での一時的なブロックによるものであり、 時間とともに回復することが前提となっています。
これは論文レベルでも一貫して示されており、 エラボトックスの効果持続は多くの場合数か月単位とされています。
重要なのは、 「戻ること」そのものではなく、 戻る前提でどう付き合う治療かという視点です。
なぜ「続ける人」と「やめる人」がいるのか
エラボトックスを受けた人の中には、
- 定期的に続ける人
- 数回でやめる人
- イベント前だけ行う人
と、選択が分かれます。
これは治療効果の優劣ではなく、 治療に求める価値が違うためです。
「常にシャープな輪郭を維持したい」 「噛みしめの症状も軽減したい」
こうした目的がある人にとっては、 定期的な施術は合理的な選択になります。
一方で、 「一度試してみたかった」 「必要な時期だけで十分」
という人にとっては、 継続しない選択もまた正解です。
美容医療における「可逆性」という価値
エラボトックスが支持されている理由の一つに、 可逆性(元に戻せる性質)があります。
これは、
- やりすぎた場合に修正できる
- ライフステージの変化に対応できる
- 価値観が変わっても引き返せる
という、安全設計とも言える特徴です。
美容医療を「一度の決断で一生背負うもの」にしない。
この柔軟性こそが、 現代の美容医療の重要な考え方の一つです。
まとめ:続けるかどうかは、医療ではなく「選択」
エラのボツリヌストキシン注射は、
- 永久治療ではない
- 時間とともに効果は弱まる
- 続けるかどうかは本人の選択
という性質を持つ治療です。
「一生続けなければならないから怖い」 「やめたら意味がない」
そうした二択ではなく、
「今の自分にとって必要かどうか」
で考える。
それが、美容医療と健全に付き合うための 最も重要な視点ではないでしょうか。
参考文献・Reference
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