ダイエットをしていると、
「脂肪が燃えている感じがする」「分解されている感覚がある」
という表現をよく耳にします。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
脂肪が分解されていることと、脂肪が減っていることは同義ではありません。
本記事では、
脂肪分解と脂肪減少の決定的な違い、
そしてなぜ多くの人が「赤字を作っているつもり」で失敗するのかを整理します。
脂肪分解と脂肪減少は同じ現象ではない
まず、最も重要な前提から確認します。
脂肪分解とは何か
脂肪分解とは、
脂肪細胞の中に蓄えられている脂肪酸が、
血中へ放出される現象です。
- 空腹時
- 運動中
- 糖質制限中
これらの状況では、
脂肪分解は比較的簡単に起こります。
脂肪減少とは何か
一方で脂肪減少とは、
分解された脂肪が、
再び戻されず、最終的に使い切られること
つまり、分解された脂肪が使い切られ、
再び戻されなかった分だけが脂肪減少として確定します。
を意味します。
脂肪は、
- 分解される
- 使われなければ
- 再び蓄えられる
という可逆的な組織です。
つまり、
分解されただけでは、体脂肪は1gも減っていません。
エネルギー収支が「見えなくなる」理由
「カロリー赤字を作れば脂肪は減る」
この説明は、原則として正しいです。
それでも多くの人が、
- 赤字を作っているつもりなのに減らない
- 一時的に減っても止まる
- 気づいたら戻っている
という経験をします。
これは、
エネルギー収支が体感と一致しないためです。
① 水分とグリコーゲンがノイズになる
糖質量が変化すると、
グリコーゲンと結合している水分も大きく動きます。
- 数日で体重が2kg動く
- 見た目が急に変わる
これらは脂肪変化ではありません。
② 消費エネルギーは固定ではない
人体は、
カロリー赤字が続くと
- 無意識の活動量(NEAT)を下げる
- 体温・ホルモンを調整する
- 回復コストを削る
ことで、
赤字そのものを小さくします。
これが、
「同じことをしているのに減らなくなる」正体です。
脂肪分解しても、なぜ脂肪は戻るのか
多くの人が誤解している点があります。
脂肪は分解されたからといって、減るわけではない
脂肪分解(リポリシス)と脂肪減少は、
生理学的に別の現象です。
脂肪が再び蓄積される主な理由
① エネルギー収支が赤字ではない
脂肪分解によって遊離脂肪酸(FFA)は血中に放出されます。
しかし、食事由来のエネルギーが十分にある場合、 身体はそれを使う必要がありません。
使われなかった脂肪酸は、 再エステル化され、 再び脂肪細胞へ戻されます。
② インスリンによる再貯蔵シグナル
インスリンは脂肪を増やすホルモンではなく、 「今はエネルギーを使わなくていい」 というシグナルです。
少量のインスリンでも、 脂肪酸の酸化は抑制され、 脂肪の再蓄積は促進されます。
③ 脂肪酸を使い切れない身体状態
運動刺激不足やミトコンドリア機能低下があると、 脂肪酸は酸化されにくくなります。
その結果、 血中に余った脂肪酸は 再び脂肪として保存されます。
④ ストレスとコルチゾールの影響
強いストレス下では、 リポリシスは促進されますが、 同時に脂肪酸利用効率は低下します。
これが、 「脂肪を使っている感覚があるのに減らない」 状態を生みます。
脂肪減少が確定する条件
脂肪は「動いた分」ではなく、
「戻れなかった分」だけ減る
脂肪減少とは、 リポリシスの頻度ではなく、 エネルギー収支が合わなかった総量 によって決まります。
なぜ脂肪減少には「赤字」が必要なのか
脂肪が減る条件は、極めてシンプルです。
使われたエネルギー > 入ってきたエネルギー
この差分が存在しない限り、
脂肪は最終的に保存されます。
ケトジェニックであっても、
脂質中心の食事であっても、
この原則は変わりません。
赤字は「作る」のではなく「保つ」
ここで重要な視点があります。
脂肪減少において本当に難しいのは、
- 一時的に赤字を作ること
- 厳しく制限すること
ではありません。
小さな赤字を、
代謝を落とさずに維持すること
これが、最難関です。
そのために必要なのは、
- 筋肉を削らない(第2回)
- 活動量を極端に落とさない
- 生活が破綻しない設計
これらが揃って初めて、
脂肪減少は「現実的な現象」になります。
まとめ
脂肪は、分解されるだけでは減りません。
使い切られ、
戻されなかったときにだけ、
初めて減少します。
そのために必要なのは、
- 見えないエネルギー収支を理解すること
- 小さな赤字を保つこと
- 筋肉と代謝を守ること
ここまで理解できれば、
「なぜ減らないのか分からない」という状態は終わります。
次回は、
「ケトジェニックはなぜ筋肉を守るのか」
ケトーシスの生理学と、筋分解抑制の機序を解説します。
| 理解すべき項目 | 誤解されがちな理解 | 実際に起きていること | 結果として見える現象 | 補足・本質 |
|---|---|---|---|---|
| 脂肪分解(リポリシス) | 脂肪が分解=脂肪が減っている | 脂肪酸が血中に放出されているだけ | 空腹感・燃焼感・体重の一時減少 | 脂肪分解は可逆的現象 |
| 脂肪減少 | 分解が起これば減る | 使い切られ、再貯蔵されなかった分のみ減少 | 数週間〜数か月での体脂肪低下 | 「戻れなかった分」だけが減少 |
| 水分・グリコーゲン | 体重変動=脂肪変化 | 糖質量変化で水分が増減 | 数日で±2kg、見た目変化 | 体重は脂肪指標としてノイズが多い |
| エネルギー収支 | 計算通り赤字が続く | NEAT低下・代謝調整で赤字が縮小 | 同じ行動でも減らなくなる | 消費エネルギーは固定ではない |
| 再蓄積①:収支 | 分解された脂肪は燃える | 赤字でなければ再エステル化 | 減らない/戻る | 赤字がなければ脂肪は保存 |
| 再蓄積②:インスリン | インスリン=悪 | 「今は使わなくていい」シグナル | 食後に脂肪が戻る | 少量でも脂肪酸酸化は抑制 |
| 再蓄積③:利用能力 | 動いているから大丈夫 | 脂肪酸を使い切れない | 血中FFA↑→再貯蔵 | ミトコンドリア・運動刺激 |
| 再蓄積④:ストレス | ストレス=燃焼 | 動員↑・利用効率↓ | 燃焼感だけ残る | コルチゾールの罠 |
| 赤字の本質 | 一時的に作ればOK | 小さな赤字を維持 | 長期で脂肪が落ちる | 赤字は「作る」より「保つ」 |
| 全体結論 | 頑張っているのに減らない | 条件未達なだけ | 停滞・リバウンド | 脂肪減少=生理+収支 |

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