第3回:脂肪はいつ、どの条件で本当に減るのか

ダイエットをしていると、
「脂肪が燃えている感じがする」「分解されている感覚がある」
という表現をよく耳にします。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

脂肪が分解されていることと、脂肪が減っていることは同義ではありません。

本記事では、
脂肪分解と脂肪減少の決定的な違い、
そしてなぜ多くの人が「赤字を作っているつもり」で失敗するのかを整理します。


脂肪分解と脂肪減少は同じ現象ではない

まず、最も重要な前提から確認します。

脂肪分解とは何か

脂肪分解とは、
脂肪細胞の中に蓄えられている脂肪酸が、
血中へ放出される現象です。

  • 空腹時
  • 運動中
  • 糖質制限中

これらの状況では、
脂肪分解は比較的簡単に起こります。

脂肪減少とは何か

一方で脂肪減少とは、

分解された脂肪が、
再び戻されず、最終的に使い切られること
   つまり、分解された脂肪が使い切られ、
   再び戻されなかった分だけが脂肪減少として確定します。

を意味します。

脂肪は、

  • 分解される
  • 使われなければ
  • 再び蓄えられる

という可逆的な組織です。

つまり、
分解されただけでは、体脂肪は1gも減っていません。


エネルギー収支が「見えなくなる」理由

「カロリー赤字を作れば脂肪は減る」
この説明は、原則として正しいです。

それでも多くの人が、

  • 赤字を作っているつもりなのに減らない
  • 一時的に減っても止まる
  • 気づいたら戻っている

という経験をします。

これは、
エネルギー収支が体感と一致しないためです。


① 水分とグリコーゲンがノイズになる

糖質量が変化すると、
グリコーゲンと結合している水分も大きく動きます。

  • 数日で体重が2kg動く
  • 見た目が急に変わる

これらは脂肪変化ではありません。


② 消費エネルギーは固定ではない

人体は、
カロリー赤字が続くと

  • 無意識の活動量(NEAT)を下げる
  • 体温・ホルモンを調整する
  • 回復コストを削る

ことで、
赤字そのものを小さくします。

これが、
「同じことをしているのに減らなくなる」正体です。


脂肪分解しても、なぜ脂肪は戻るのか

多くの人が誤解している点があります。

脂肪は分解されたからといって、減るわけではない

脂肪分解(リポリシス)と脂肪減少は、
生理学的に別の現象です。


脂肪が再び蓄積される主な理由

① エネルギー収支が赤字ではない

脂肪分解によって遊離脂肪酸(FFA)は血中に放出されます。
しかし、食事由来のエネルギーが十分にある場合、 身体はそれを使う必要がありません。

使われなかった脂肪酸は、 再エステル化され、 再び脂肪細胞へ戻されます。

② インスリンによる再貯蔵シグナル

インスリンは脂肪を増やすホルモンではなく、 「今はエネルギーを使わなくていい」 というシグナルです。

少量のインスリンでも、 脂肪酸の酸化は抑制され、 脂肪の再蓄積は促進されます。

③ 脂肪酸を使い切れない身体状態

運動刺激不足やミトコンドリア機能低下があると、 脂肪酸は酸化されにくくなります。

その結果、 血中に余った脂肪酸は 再び脂肪として保存されます。

④ ストレスとコルチゾールの影響

強いストレス下では、 リポリシスは促進されますが、 同時に脂肪酸利用効率は低下します。

これが、 「脂肪を使っている感覚があるのに減らない」 状態を生みます。


脂肪減少が確定する条件

脂肪は「動いた分」ではなく、
「戻れなかった分」だけ減る

脂肪減少とは、 リポリシスの頻度ではなく、 エネルギー収支が合わなかった総量 によって決まります。

なぜ脂肪減少には「赤字」が必要なのか

脂肪が減る条件は、極めてシンプルです。

使われたエネルギー > 入ってきたエネルギー

この差分が存在しない限り、
脂肪は最終的に保存されます。

ケトジェニックであっても、
脂質中心の食事であっても、
この原則は変わりません。


赤字は「作る」のではなく「保つ」

ここで重要な視点があります。

脂肪減少において本当に難しいのは、

  • 一時的に赤字を作ること
  • 厳しく制限すること

ではありません。

小さな赤字を、
代謝を落とさずに維持すること

これが、最難関です。

そのために必要なのは、

  • 筋肉を削らない(第2回)
  • 活動量を極端に落とさない
  • 生活が破綻しない設計

これらが揃って初めて、
脂肪減少は「現実的な現象」になります。


まとめ

脂肪は、分解されるだけでは減りません。

使い切られ、
戻されなかったときにだけ、
初めて減少します。

そのために必要なのは、

  • 見えないエネルギー収支を理解すること
  • 小さな赤字を保つこと
  • 筋肉と代謝を守ること

ここまで理解できれば、
「なぜ減らないのか分からない」という状態は終わります。


次回は、
「ケトジェニックはなぜ筋肉を守るのか」
ケトーシスの生理学と、筋分解抑制の機序を解説します。

理解すべき項目誤解されがちな理解実際に起きていること結果として見える現象補足・本質
脂肪分解(リポリシス)脂肪が分解=脂肪が減っている脂肪酸が血中に放出されているだけ空腹感・燃焼感・体重の一時減少脂肪分解は可逆的現象
脂肪減少分解が起これば減る使い切られ、再貯蔵されなかった分のみ減少数週間〜数か月での体脂肪低下「戻れなかった分」だけが減少
水分・グリコーゲン体重変動=脂肪変化糖質量変化で水分が増減数日で±2kg、見た目変化体重は脂肪指標としてノイズが多い
エネルギー収支計算通り赤字が続くNEAT低下・代謝調整で赤字が縮小同じ行動でも減らなくなる消費エネルギーは固定ではない
再蓄積①:収支分解された脂肪は燃える赤字でなければ再エステル化減らない/戻る赤字がなければ脂肪は保存
再蓄積②:インスリンインスリン=悪「今は使わなくていい」シグナル食後に脂肪が戻る少量でも脂肪酸酸化は抑制
再蓄積③:利用能力動いているから大丈夫脂肪酸を使い切れない血中FFA↑→再貯蔵ミトコンドリア・運動刺激
再蓄積④:ストレスストレス=燃焼動員↑・利用効率↓燃焼感だけ残るコルチゾールの罠
赤字の本質一時的に作ればOK小さな赤字を維持長期で脂肪が落ちる赤字は「作る」より「保つ」
全体結論頑張っているのに減らない条件未達なだけ停滞・リバウンド脂肪減少=生理+収支

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