第4回:ケトジェニックはなぜ筋肉を守るのか

「ケトジェニックは筋肉が落ちる」
これは、今でも広く信じられている通説です。

しかし実際には、
条件を満たしたケトジェニックは、筋分解を抑制しやすい
という側面を持っています。

本記事では、

  • ケトーシスとは何が起きている状態なのか
  • なぜ筋分解シグナルが入りにくくなるのか
  • 医学的に見た安全な運用期間

を、生理学ベースで整理します。


ケトーシスの生理学的背景

ケトジェニックとは、
単に「糖質を減らす食事法」ではありません。

正確には、

主エネルギー源を
グルコースから脂肪酸・ケトン体へ切り替えた状態

を指します。

通常の低カロリー減量との違い

通常の低カロリー・低脂質減量では、

  • 血糖は下がる
  • 脂肪供給は追いつかない
  • エネルギー不足が発生する

結果として、

  • 糖新生の材料として筋肉が使われる
  • コルチゾールが上昇する

という流れになります。

一方、ケトーシスでは、

  • 脂肪酸供給が安定する
  • ケトン体が脳・筋の燃料になる

ため、
筋肉を削って血糖を維持する必要性が下がります。


ケトで筋分解が抑制される機序

ケトジェニックが筋肉を守りやすい理由は、
単一の要因ではありません。


① 糖新生需要の低下

ケトーシスが成立すると、

  • 脳のエネルギー需要の大部分をケトン体が担う
  • 血糖の最低維持量が下がる

結果として、

筋肉由来アミノ酸を
無理に使う必要がなくなる


② インスリンの「低値安定」

インスリンは、

  • 高すぎると脂肪を溜め
  • 低すぎると筋分解が進む

という二面性を持ちます。

ケトジェニックでは、

  • インスリンは低い
  • しかし完全にゼロにはならない

という安定帯に入りやすく、

エネルギーは脂肪から供給され、
筋分解シグナルは過剰に入らない

という状態が成立します。


③ コルチゾール依存の低下

カロリー制限下で最も問題になるのは、

  • 慢性的なコルチゾール上昇

です。

ケトジェニックでは、

  • エネルギー不足が起こりにくい
  • 血糖維持のためのストレス反応が減る

ため、
筋分解を促すホルモン環境になりにくい
という利点があります。


医学的に考える安全期間(3〜6か月)

ケトジェニックは、
永久に続ける食事法ではありません。

医学的・臨床的には、

3〜6か月を一区切りとする

という考え方が現実的です。

理由

  • 甲状腺ホルモンの低下リスク
  • 電解質バランスの偏り
  • 食事多様性の低下

これらは短期では問題にならなくても、
長期では代謝適応を引き起こします。

そのため、

  • 減量フェーズ:ケトを利用
  • 維持フェーズ:段階的に解除

というフェーズ設計が重要になります。


まとめ

ケトジェニックは、

  • 筋肥大に最適な食事法ではない
  • しかし筋肉を守りながら脂肪を減らすには有効

という明確な立ち位置を持ちます。

正しく使えば、

カタボリックを最小化しながら
脂肪だけを削る

という設計が可能になります。


次回は、
「ケト解除後に体重が戻る本当の理由」
リバウンドの正体と、解除設計について解説します。

理解すべき項目誤解されがちな理解実際に起きていること結果として見える現象補足・本質
ケトジェニックの本質糖質を抜くダイエットエネルギー基質を脂質・ケトンへ移行空腹感低下・エネルギー安定ケトは代謝状態の切り替え
ケトーシス特別な燃焼モード脳・筋がケトン体を利用低血糖症状が出にくい糖依存からの脱却
筋分解の主因カロリー不足糖新生要求によるアミノ酸動員筋肉が削られる筋分解=エネルギー+シグナル
ケトでの糖新生必ず筋肉が削られるグリセロール・乳酸を優先利用筋分解が最小化筋肉は最後の供給源
インスリン低下筋肉が減る低インスリンでも感受性は維持筋量が保たれる分泌量と作用は別
AMPK活性化=筋肥大不可省エネ・脂肪酸利用を促進無駄な分解が減る減量期では有利
mTORケトでは完全に止まる刺激・アミノ酸で局所的に活性筋量維持〜微増mTORは常時ON不要
AMPK × mTOR完全に相反する時間・条件で役割分担同時破綻は起きにくい両立は可能
コルチゾールケト=強ストレス血糖安定で過剰分泌が抑制筋分解抑制設計次第で味方
空腹ホルモン空腹が強くなるグレリン低下・満腹維持過食しにくい継続性の鍵
筋トレとの相性相性が悪い強度維持で刺激は十分筋量維持〜微増ボリューム設計が重要
医学的な安全期間永久に続けられる代謝・内分泌の適応限界あり3〜6か月が目安維持期前提で使う
全体結論ケトは筋肉を削る筋分解トリガーを減らす減量中でも筋量維持「守る減量」の代表例

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