第4回|NEATはなぜ静かに下がるのか
ここまでのシリーズで、
- 断食はmTORを止め、AMPKを優位にする
- その結果、筋肉は分解されやすくなる
という「内部の話」を見てきました。
第4回では視点を少し外に向け、
「食べていないのに、なぜ思ったほど痩せないのか」
という、多くの人が必ずぶつかる疑問を解体します。
消費カロリーは運動だけではない
消費カロリーというと、多くの人は
- 運動
- トレーニング
を思い浮かべます。
しかし、1日の消費カロリーは大きく4つに分けられます。
- 基礎代謝
- 食事誘発性熱産生(DIT)
- 運動による消費
- NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)
NEATとは、 運動以外のすべての無意識な活動量です。
NEATとは何か
NEATに含まれるのは、
- 立つ・歩く
- 姿勢を保つ
- 身振り手振り
- そわそわ動く
- 日常作業のテンポ
といった、 本人が「運動している」と認識しない動きです。
しかしNEATは、 人によって数百kcal単位の差を生みます。
NEATは「意志」で管理されていない
ここが最大の誤解ポイントです。
NEATは、
「やる気」や「根性」で増減するものではありません。
それは、 脳とホルモンが自動調整している変数です。
つまり、
- 本人は同じ生活をしているつもり
- でも実際の消費は変わっている
という現象が普通に起きます。
断食でNEATが下がる理由
断食中、体内では次の変化が起きています。
- エネルギー不足
- AMPK優位
- 生存モードへの切り替え
この状態で体が最優先するのは、
「消費を減らして生き延びること」
です。
その結果、
- 無意識に動かなくなる
- 姿勢が崩れる
- 動作が遅くなる
といった形で、 NEATが静かに削られます。
なぜ本人は気づかないのか
NEAT低下が厄介なのは、
「自覚がほぼ不可能」
な点です。
人は、
- 歩数が少し減った
- 立っている時間が短くなった
- 動作のキレが落ちた
ことを、 意識的に記憶しません。
結果として、
「食べていないのに痩せない」
という不可解な感覚が生まれます。
消費カロリーが「消える」仕組み
断食や極端な制限で起きているのは、
摂取カロリー ↓ 消費カロリー ↓↓
という現象です。
特にNEATは調整幅が大きいため、
- 食事を減らした分
- そのまま消費も減る
という相殺が起きます。
これが、 停滞・リバウンド・徒労感 の正体です。
NEAT低下は「失敗」ではない
重要なのは、
NEATが下がること自体は 体の防御反応
だという点です。
問題は、
その仕組みを理解せずに 「もっと削ればいい」と考えること
です。
それは、 さらにNEATを下げ、 筋肉を削り、 代謝を落とす方向へ進みます。
次回への橋渡し
ここまでで見えてきたのは、
体は「入ってこないエネルギー」に対して 必ず「使わない方向」で適応する
という事実です。
次回は、
「では、体はどうすれば“削らずに”使い続けてくれるのか」
という問いに対して、 設計としての減量・体組成改善 を整理します。
第4回|NEAT低下の構造を理解する整理表
| 視点 | 内容 | よくある誤解 |
|---|---|---|
| NEATとは | 運動以外の無意識な日常活動量 | 軽視できる微小な消費 |
| 消費カロリー内での位置 | 個人差・調整幅が最も大きい要素 | 運動が最重要 |
| 制御主体 | 脳・ホルモンによる自動調整 | 意志や根性で管理できる |
| 断食中の状態 | エネルギー不足・AMPK優位 | 脂肪燃焼が最大化している |
| 体の最優先目標 | 消費を減らして生存する | 体重を減らすこと |
| NEAT低下の具体例 | 歩数減少・動作低速化・姿勢維持低下 | 自分は同じように動いている |
| 自覚の有無 | ほぼ自覚不可能 | 気合で防げる |
| 消費カロリーの変化 | 摂取減少に伴い消費も低下 | 食べなければ消費は維持される |
| 結果として起きる現象 | 停滞・痩せにくさ・リバウンド | 意志が弱いから失敗した |
| 本質的な理解 | NEAT低下は防御反応 | 失敗・代謝が壊れた |

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