第7回|甲状腺ホルモンが省エネモードに入るとき
「最初は順調だったのに、ある日を境にまったく減らなくなる」
「体が冷える」「回復が遅い」「動く気が起きない」
この段階で起きているのが、 甲状腺ホルモンによる省エネ化です。
第7回では、
- 甲状腺ホルモンが代謝をどう制御しているか
- なぜカロリー不足で抑制されるのか
- 体が「痩せるのをやめる瞬間」の正体
を構造的に整理します。
T3 / T4とは何か
甲状腺ホルモンは主に、
- T4(サイロキシン):貯蔵・前駆体
- T3(トリヨードサイロニン):実働・代謝促進
という2つで語られます。
重要なのは、
代謝を実際に動かしているのはT3
だという点です。
T3は、
- ミトコンドリア活性
- 熱産生
- 神経伝達速度
- 心拍・血流
を広範囲に底上げし、 「エネルギーを使う許可」 を出すホルモンです。
カロリー不足で何が起きるのか
体は、
「エネルギーが足りない状態で代謝を上げ続ける」
という選択をしません。
断食や長期的な摂取不足が続くと、
- T4 → T3 変換が抑制される
- 逆T3(rT3)が増える
- 末梢でのT3感受性が下がる
という、 多段階のブレーキが入ります。
これは故障ではなく、 生存のための再設計 です。
「痩せるのをやめる瞬間」とは
このフェーズに入ると、
- 摂取を減らしても体重が動かない
- 運動しても消費が伸びない
- 疲労と冷えが目立つ
という状態になります。
これは、
脂肪が落ちないのではなく 「落とさない設計」に切り替わった
状態です。
ここでさらに削ると、
- 筋分解の加速
- 回復力の低下
- リバウンド耐性の喪失
が起こります。
冷え・停滞・回復遅延の正体
甲状腺ホルモンが抑制されると、
- 熱産生が下がる → 冷え
- 神経活動が鈍る → 動けない
- タンパク合成が進まない → 回復遅延
が同時に起きます。
これは気合や意志では覆せません。
ホルモンが「使うな」と命令している
からです。
これまでの要素との接続
ここで、 これまでの流れを統合します。
- 断食 → AMPK優位
- AMPK優位 → NEAT低下
- 低回復 → コルチゾール慢性化
- 慢性不足 → 甲状腺ホルモン抑制
つまり、
甲状腺ホルモン低下は「最後の防衛線」
です。
まとめ
甲状腺ホルモンが下がるとき、
- 体は間違っていない
- サボってもいない
ただ、
「これ以上は危険だ」と判断している
だけです。
この段階で必要なのは、
さらに削ることではなく 設計を戻すこと
です。
次回はいよいよ最終回。 断食が機能する条件/破綻する条件を すべてのスイッチで統合します。
第7回|理解項目まとめ表(T3 / T4 × 代謝 × 停滞)
| 項目 | 正常状態 | 抑制状態 | 結果としての停滞 |
|---|---|---|---|
| T3の役割 | ・代謝促進 ・熱産生↑ ・神経活性↑ | ・T3低下 ・rT3増加 | 消費が伸びず 体重が動かない |
| T4の役割 | ・T3の材料 ・安定供給 | ・変換抑制 ・活性化されない | 代謝の 「燃料切れ」 |
| カロリー不足の影響 | ・T3生成維持 | ・T4→T3低下 ・rT3優位 | 省エネ設計へ移行 |
| 熱産生・体温 | ・体温維持 ・末梢血流良好 | ・熱産生低下 | 冷え・寒がり |
| 神経・行動 | ・反応速度良好 ・動きやすい | ・神経伝達低下 | NEAT低下 動きたくない |
| 回復・合成 | ・mTORが機能 ・回復が進む | ・合成抑制 | 筋回復遅延 停滞感 |
| 主観症状 | ・活力あり | ・疲労感 ・集中力低下 | 「痩せるのをやめた」 と感じる |

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