たるみ治療は何回まで許されるのか長期エビデンスから考える

たるみ治療の長期エビデンス
──「効いた後、何が残るのか」

第1回では、
切開・糸・HIFU(ハイフ)が
それぞれ異なる層に介入する医療であることを整理しました。

第2回では、
もう一段階踏み込み、
時間が経ったあと、組織に何が残るのか
という視点で考えます。


美容医療における「長期エビデンス」とは何か

まず前提として、
美容医療には内科治療のような
数十年単位の厳密なエビデンスはほとんど存在しません。

多くの場合、

  • 数か月〜数年の臨床研究
  • 術後経過の観察報告
  • 手術時の組織学的所見

これらを積み重ねて、
「長期的にはこうなりやすい」
という傾向を読み取っています。


切開フェイスリフトの長期的変化

SMASを含む切開フェイスリフトについては、
比較的長期の観察報告が存在します。

SMASを再配置する手技は、
皮膚だけを引き上げるよりも効果が長く持続する
ことが報告されています。

例えば、
RohrichらやJaconoらのレビューでは、
SMASを適切に扱ったフェイスリフトは
10年以上にわたって形態的改善が維持される症例がある
とされています。

(Rohrich RJ et al., Aesthetic Surgery Journal / Jacono AA et al.)

一方で、
切開は不可逆的な組織変化を伴います。

「効果が高い」ことと、
「元に戻せない」ことは、
常に同時に存在します。


糸リフトに長期エビデンスはあるのか

糸リフトについては、
短期的な有効性を示す報告は多い一方、
長期データは限られています。

Sulamanidzeらの報告では、
糸リフト単独での効果は
時間とともに減弱することが示されています。

(Sulamanidze M et al., Aesthetic Plastic Surgery)

また、複数回施行された症例では、
手術時に線維化や組織の硬化が観察されたという報告もあります。

重要なのは、
「効かなくなる」のではなく、
「組織が変わった結果、効きにくくなる」

可能性があるという点です。


HIFU(ハイフ)の長期的評価

HIFUは「切らない」「入れない」治療として
広く行われています。

システマティックレビューでは、
HIFUが顔・首の皮膚の引き締めに
有意な効果を示すことが確認されています。

(Vachiramon V et al., Lasers in Medical Science)

しかし同時に、
長期的な組織変化についてはデータが不足している
とも明記されています。

組織学的研究では、
HIFU後にタンパク変性や線維化が起こることが示されており、
これが繰り返し照射時にどう影響するか
完全には分かっていません。


「何回までできるか」という問いの危うさ

ここで多くの人が、
「では、何回までなら安全なのか」
と考えます。

しかし論文を見ても、
回数の上限を明確に示した研究は存在しません。

それでも臨床現場で
「やりすぎ」が問題になるのは、
効果ではなく、組織変化が蓄積するからです。

回数制限とは、
科学的な数字というより、
時間と不可逆性を考慮した経験則だといえます。


次回に向けて

次回は、
さらに一歩進めて、

  • なぜ「老けて見える顔」が生まれるのか
  • やりすぎが戻らない理由
  • 医師側の倫理と限界

といった、
上級者向けの話題に進みます。


まとめ

  • 美容医療の長期エビデンスは「傾向」を読むもの
  • 切開は効果と不可逆性がセットで存在する
  • 糸・HIFUは短期効果と組織変化を切り離せない
  • 回数制限は数値ではなく時間軸の問題

次回予告:
なぜ「急に老けた顔」が生まれるのか
── 上級者向け・不可逆変化の話


論文名
主旨(2〜3行要約)
Evolution of Facelift Techniques and Outcomes
Rohrich RJ et al.
フェイスリフト手技の進化と結果を総括したレビュー。
SMASを含む構造的介入は、皮膚のみの牽引よりも
長期的に安定した結果を得やすいと報告している。
Evaluation of Facelift Techniques and the Role of the SMAS
Jacono AA et al.
各種フェイスリフト手技を比較し、
SMAS操作が結果の持続性に寄与する可能性を示唆。
一方で不可逆的変化を伴う点にも言及している。
Longevity of SMAS Facial Rejuvenation and Support
Sundine MJ et al.
SMASを適切に処理したフェイスリフト症例では、
10年以上にわたり形態的改善が維持されたケースがあると報告。
長期持続性の一例を示す論文。
Thread Lifting for Facial Rejuvenation: Assessment of Long-term Results
Sulamanidze M et al.
糸リフトの長期結果を評価した研究。
即時的な引き上げ効果は確認されるものの、
時間経過とともに効果が減弱する傾向が示されている。
Update on Absorbable Facial Thread Lifting
de Benito J et al.
吸収性糸リフトに関する総説。
短期的な有効性と安全性は示されているが、
長期データは限定的であると明記されている。
Systematic Review of High-Intensity Focused Ultrasound for Skin Tightening
Vachiramon V et al.
HIFUによる皮膚引き締め効果をまとめたシステマティックレビュー。
顔・首に対する有意な改善効果が示される一方、
長期的影響については十分なデータがないと結論づけている。
Histologic and Clinical Evidence of Tissue Response to Focused Ultrasound
White WM et al.
HIFU後の組織学的変化と臨床効果を検討。
タンパク変性や線維化などの反応が確認され、
繰り返し照射時の影響については今後の検討課題とされている。

References

  1. Rohrich RJ, Pessa JE, et al.
    Evolution of facelift techniques and outcomes.
    Aesthetic Surgery Journal.
  2. Jacono AA, et al.
    Evaluation of facelift techniques and the role of the SMAS.
    Aesthetic Surgery Journal.
  3. Sundine MJ, et al.
    Longevity of SMAS facial rejuvenation and support.
    Plastic and Reconstructive Surgery.
  4. Sulamanidze M, et al.
    Thread lifting for facial rejuvenation: assessment of long-term results.
    Aesthetic Plastic Surgery.
  5. de Benito J, et al.
    Update on absorbable facial thread lifting.
    Journal of Cosmetic Dermatology.
  6. Wu WT.
    Barbed sutures in facial rejuvenation: a multicenter review.
    Dermatologic Surgery.
  7. Vachiramon V, et al.
    Systematic review of high-intensity focused ultrasound for skin tightening.
    Lasers in Medical Science.
  8. White WM, et al.
    Histologic and clinical evidence of tissue response to focused ultrasound.
    Aesthetic Surgery Journal.
  9. Shaw RB Jr, Kahn DM.
    Aging of the facial skeleton: aesthetic implications.
    Plastic and Reconstructive Surgery.
  10. Rohrich RJ, Pessa JE.
    The fat compartments of the face: anatomy and clinical implications.
    Plastic and Reconstructive Surgery.

※ 本記事は、上記文献および既存の医学的知見をもとに、
美容医療を受ける際の「考え方」を整理することを目的として作成しています。
特定の治療や回数を推奨するものではありません。

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